税制改革の話

津島雄二自由民主党税制調査会会長の『税財政改革と日本の将来」と題しての講演から
講演はそのフルブライト留学生でシラキューズ大学に行ったときの話から始まる。 1955年にはまだ、飛行機でと言う時代ではなく、船で3日かけてシカゴに着き、それからシャトルに向かった。 その途中に人口65万人のゲーリー市があり、そこに大きな製鉄所(UST)があり、列車で相当の時間走ったが工場が続き、その大きさにびっくりした。 こんな大きな製鉄所のある国と戦争をしても勝てるはずがないとすら思った。 それから30年後、留学時代を回顧して、アメリカ一人旅をした。 びっくりしたことに、そこにはあの巨大製鉄会社はなくなり、ゲーリー市の人口は今や15万にまでに減少したという。 ニュウイングランド地域がそっくり移転してしまっていたのである。 新しい産業政策のためには巨大な製鉄会社まで捨て去ることの出来る国で産業構造は日本と違うと思った。
世の中は変化の中にあり、発展持続のために変化をしっかりと把握した税制改革が必要になってくるのである。 税制論者は多いが、戦後から真理だと思ったことも覆されて来ている。 本当のあるべき姿を求めて議論をしていくべきである。
経済の成長に伴う国の富の持続は経済政策としての政治の課題でもあり、歴史的に経済の発展を踏まえて対処していくべきである。
税制は国民の心理に適い、受け入れられることが必要であり、世界的な脅威にも対応できるマクロ経済からも見た多くの要素をクリアしながら結論を出すべきである。
景気が上昇している上げ潮路線に向かう心理だけで見る税制改正であってはならない。 市場心理や世界の趨勢も大事であるが、それだけでは心配である。
グローバルな経済維持が大事とアメリカでは言われるが、アメリカは巨大な軍事費で支えられ、採算を度外視してやっている部門がある。 IT技術もミサイル開発も皆、軍事技術から発達してきている。 従って、その論法だけに従っていてはわが国が幸せになっていけるかどうかは疑問である。
最近の中国の発展も企業の中に共産党が入り込んで民間企業までを支配していると言うことは現実である。
ロシアの台頭もエネルギーを武器にしたもので、このような世界の様々な問題を踏まえて税財政問題を議論しなければならない。
最近『富の未来』という本を読んだが、この中で著者はアジアの素晴らしさを称えている。 5世紀前中国は世界で一番優れた技術を持っていた。
今で言うGNPの先進国で欧米を越えていた。 15世紀の産業革命以前ではアジアの技術が先行し、1405年には歴史上の大航海が中国から世界の探検に向かった。 その勢力は317隻の舟に2万7千人の乗組員がいたとのことであった。 これからの世界は今まで以上に広い視野で物を見て行くべきで、「第3の波」の時代に入ったことを示している。 比較大量生産方式が変っていきマーケットの物を作る原則が難しくなってきて、質的に変化が起きてきていることを示唆している。 物を作るときは生産者だが家庭に帰り物を買う側になったときには消費者になる。 この指摘に見られるように新しい富を作るものは消費者自身がそれぞれの地域で物を作る時代になってきている。
最近では新しい技術も5年も維持できないから、大量生産には向かない。
地域で新しい手法を開発したところは残ると言うことをこの「第3の波」が示唆している。 このようなことを踏まえて税制問題を考える。
数字だけを追うと公共事業は不要だと言うことになってしまう。
また、予算を出来るだけカットすればよいという議論になってしまう。
新しい税制は経済成長の要件を満たしていく税制とすることが必要である。
社会の変化を考え、社会全体を頭において経済成長を論じ、必要な企業には減税をし、産業の発展を図っていくべきである。
民社党が推進しているスエーデン方式は与野党が合流し、話し合って出来たもので、同じようなことがドイツでも進められている。 中身は大増税で消費税が中心になっている。 法人税は減税だが所得税は増税し、事業税は損金参入をしないという内容である。
何れも与野党合意で、国民の大多数の合意を受けて決められている。
やわらかく言うと、今は選挙戦の前で税制論議は行わない。
しかし、税制問題は与野党が話し合い国民の合意を得て進められるべきであって、現在の上げ潮路線では4%も経済成長が望めれば消費税は要らないということにはならない。 40年代の岩戸、イザナギ景気の10%成長時代とは違う。
結論として、直面する今、我々の課題は、21世紀の先頭に立って立ち向かって行くべきで、世界的に人口が減るなかで、環境問題やエネルギー資源問題等を意識しながら討議を重ねなければならない。
大量生産時代ではない21世紀の税制は辛抱してやっていくべきで、直接、間接を問わず国民に問うべきである。 消費税は悪だと思われているが、だとするならば、他にも選択肢があるのか討議をすべきである。
所得税も核家族化の問題を踏まえて夫婦合算して累進課税にする問題や金融資産課税、証券市場課税の10%を増税する問題や税の地域配分問題等与野党が議論し、国民の合意を得ながら税制改革を進めていきたい。
講演の後の質問で:
1.消費税の値上げはあるのかの質問に対して税の問題は消費税だけではない。 消費税のみの質問には応じかねる。
2.社会保障の給付水準を維持するために増税があるのかの質問に対して、そうなると思う。 2500億円の負担増になるが、給付水準を維持しなければ約束違反になってしまう。
3.税制改革の具体策はとの質問に対して、具体的に今はない。 党内外で議論を尽くしたい。
4.経済界では法人税30%論が出ているがとの質問に対して、他の税と平行して抜本的に議論をしたい。 地方税配分と併せて検討する。
最近のコメント