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2008/01/21

文ちゃん近況

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文ちゃんは運転小僧で運転は抜群に上手い。 中学を卒業してから運転一筋に一生を通した男で今年で75歳になる。  良く言えば、誰にでも愛嬌を振りまいて、ニコニコ話しかける。 得意なのは言葉遊びである。 「こういう意味を知っているか」「この字はどうして生まれたのか知っているか」と投げかけてくる。 実は少々うんざりものなのである。 文ちゃんは定年後も色々な場所で送迎用の運転手からお抱え運転手まで勤めていたと言うことは風の便りで聞いていた。 その文ちゃんに昼時、とある食堂で 偶然に会った。 そうしてこう切り出した。  「俺今年早稲田大学を卒業できることになった」と言うではないか。  「へえどうして」と聞かざるを得なかった。  また、ほら吹きかと思ったからである。  だが、彼は淡々として話し続けた。  何時もと違って落ち着いた口調である。  70歳で勉強を始め、大学入学資格試験と続けて早稲田大学の一般入学試験に挑戦し、めでたく入学、そして今年の3月27日には武道館で卒業式を迎えることとなったのである。  学部は第一文学部の国文科で卒論のテーマは「太宰治を囲む女達」だそうである。  年金がら毎年80万円の授業料は苦しかったが、女子学生の多い文学部で「おじさん、おじさん」と囲まれながらの楽しい4年間だったと述懐していた。  話をしている目の前にいる文ちゃんは旧来の文ちゃんではなく別人のようにも思えてきた。  これからは近所の子供達を集めて言葉遊び塾を開いて行こうと思っていると話しを続けた。
帰りは「じゃまた、元気でね」と淡々と別れたが、気持ちが洗われたようになって感心し続けた。  やればできる、だが誰でもできるものではない。 老後の生き方は誰の物でもない自分のものだから自分自身で
決め自分の足で歩けば良い。  だが、だが誰でもできるものではないと反省を交えて深く感心し続けている。