悲しい出来事
9時ごろ電話が入った。
[不審者がいるので、110番に電話して良いか]という内容だった。
[不審者者は年老いた男女2人。 老人は凄い目つきで近寄り難い]と言う。
そこは閉鎖した工場の中でその日から再建のための工事に着手した監督者からの電話だった。
2人は「廃虚の机に置かれた椅子に座ったまま動かない]と言う。
[ちょっと待っていてください。] 思い当たることがあったのでそういって電話を切り、担当者を現場に直行させた。
2週間ほど前のこと、警察からの通知があってその担当者を向けた。 70才に近い老夫婦が夜中に廃工場の中から電線を切って運び出している所を近所の人に見つかって捕らえたというものだった。 電線は金額にして3000円程度のもの。 出向いた担当者は[僅かの金額で鉄格子の部屋の中に閉じ込めて置くなんて可哀想ですよ」興奮しながらその結果を報告をしてきた。 その老夫婦を思い出したからである。
11時ごろ再び電話があった。 「老婆の方が救急車を呼んで下さい」と訴えてきた来たので対処したと言うものである。 それから、救急車、パトカー、現場検証と一悶着があって様子がわかってきた。
矢張り、予感通り前のコソドロ老夫婦だったのである。
またまた、夜中に鉄骨の梁まで上って電線を外していたところ落下し顔をコンクリート面にたたきつけ重症だったのである。 凄い形相ではなく瀕死の顔だったのを怖さからそうとっていたのである。
老婆は救いを求めるのではなくじっと側に立ち尽くしているだけだったのである。
乗ってきた乗用車は2年前に車検切れのものだから夜中でなければ走れなかったのであろう。 それにしても、夜半から11時までの長い時間痛みに耐え、側の老婆は救いを求めることも出来ず老人の日を前に何と哀れな話であろうか。 再犯だからという警察に対して「こちらは何も実害がないから穏便に」と言うのが精一杯だった。
時に総裁選のニュースが華々しく伝えられているが、この話に重ねて何とむなしく聞こえることか。 誰にぶっつけたら良いのだろうかこの説明し難い感情を。


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